マイストーリー
「幼い頃、書道教室に行った」
それが始まりだった。
「書に於いて相対するのは自分自身である」これは師からの教えだ。
師は「書家のあるべき姿」を自分の命が尽きるまで見せ続けてくれた。
師は自身を「書き家」だと言った。
書くこと以外は何も持たなくていいというのだ。
自分を飾る環境は要らないというのだ。
その様な師の教えが苦しい時もあった。
力のない私は自分を飾る環境が欲しいと思うこともあった。
私には書くこと以外に与えられるものは何もなかった。
与えられたのは師からの教えだけだ。
「幼い頃、書道教室に行った」
それから今日までただ歩いて来ただけだ。
それしか術はなかった。
単純なことだ。
特別なことなど何もない。
そして
歩いて来た先にあったのは世界の扉だった。
歩くのを諦めたらこの扉を開けることはなかっただろう。
気がつけば「川原溪月」の作品は世界を旅するようになった。
私の作品を「まるで音楽のようだ」と言った人がいる。
私にとっては最高の言葉だ。
これからも一歩一歩、更に思いを強く書を愛し書き続けよう。
師が与えてくれたものは想像を遥かに超えたものだった。
今、それに気づく。